エネルギー価格急騰と地政学的緊張がBRICS各国の市場と政策を一段と硬直化させる
世界の原油価格が急上昇し、ロンドンICEのブレントが1バレル=119ドルを上回る水準に達したほか、欧州のガスが1,000立方メートル当たり800ドルを超えるなどエネルギー市場の緊張が鮮明になっている。イラン情勢を巡る供給混乱は南アフリカの燃料費とインフレ圧力を押し上げ、市場ではインデックスの急落や地域ごとの通貨・株価の変動を誘発している。
こうしたエネルギーと地政学リスクを受け、各国は金融・安全保障・貿易の複合的対応を進めている。ブラジルやインドでは市場の変動に対する政策見通しの見直しが進み、ロシアは国際舞台での外交・軍事的主張を強める一方、対外的な法整備を通じて戦闘員の扱いを固めた。中国は低炭素・デジタル化を軸に経済の構造対応を打ち出している。
ブラジル
ブラジルでは政策金利見通しの引き上げと輸出多角化の模索が並行して進んでいる。トレーダーは2026年の政策金利見通しを引き上げ、消費者物価と市場のGDP成長コンセンサスは概ね横ばいを保った。国会のCPI(議会調査委員会)は、元会長を組織犯罪との関係を巡って召喚する決定を行い、ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は弱年被害者の強姦の相対化を防ぐ法案に署名した。世界的な希土類需要の高まりを輸出多角化の機会とする動きも指摘される。
ロシア
ロシアでは外交的表明と軍事的行動が同時に展開され、内外での影響力を強めている。国連安全保障理事会に停戦を求める決議案を提出しつつ、ウラジーミル・プーチン大統領はイランへの支持と連帯を公に再確認した。モスクワ取引所指数は2,900ポイントを上回り、ロシア軍はドネツクのゴルブフカ集落を「解放」したと発表し、同夜に163機の無人機を撃墜したと主張した。大統領は指揮下で戦った外国人戦闘員の引き渡しを禁止する法律にも署名した。
インド
インドでは外交・安全保障の強化と市場の急変が議会の議題を支配している。議会が再開し、対外邦人保護を最優先とする方針が明確化された。インド株式市場は直近の取引で大幅な下落を記録し、Sensexは一時1,000ポイント超の下落となり、一部では1,800ポイント超の下落とする報告がある。ナレンドラ・モディ首相はフィンランド大統領と会談し安全保障協力と貿易連携を強調し、インドとイスラエルは16件の了解覚書に署名して特別な戦略的パートナーシップを発表した。ナスコムはサイバーと事業継続の強化を企業に促した。
中国
中国では政治統制の強化と成長モデルの転換が同時に進んでいる。全国人民代表大会常務委員会は3月9日に第2回総会を開催し、台湾独立を主張する動きに対する処罰強化と政治的一体化を強調した。2月の消費者物価は前年同月比1.3%上昇し、対米ドルの公式換算レートは1ドル=6.9158人民元に下落した。広東省のカーボン市場は下落して取引を終え、国営メディアはAI主導のスマート経済と低炭素成長ロードマップを掲げた。中国資金によるジンバブエの空港拡張は旅客流入を増加させた。
南アフリカ
南アフリカでは対外外交と国内の説明責任が同時に課題となっている。シリル・ラマポーザ大統領はブラジリアを訪問しルラ大統領と上級協議を行ったが、帰国後は大統領自身と複数閣僚が議会での質疑・監視手続きに直面する準備を進めている。マドラング委員会は元閣僚の非公開証言請求を却下し、証人ムクワナジの証言を延期した。西ケープ高等裁判所は付加価値税を巡る判断を通じて議会の税制統制を回復する判断を示し、教育相は公共部門の賃貸契約に関する報告を認めた。イラン発の供給混乱は燃料費を押し上げ、インフレ圧力を強めている。
急騰するエネルギー価格はBRICS諸国のインフレと財政負担を直撃し、世界成長を押し下げる具体的なリスクを生んでいる。加えて、安全保障や法整備を巡る各国の対応が互いに矛盾し、協調的な経済政策を阻む最大の障害になっている。