エネルギー価格の急変と地政学的緊張が同時進行でBRICS経済を揺るがす
原油を巡る地政学リスクの高まりとそれに伴う価格の乱高下が、BRICS各国の市場、通貨、政策見通しに直ちに影響を及ぼしている。中東での緊張激化は国際原油価格を記録的水準へと押し上げる局面を作った一方で、別の局面では急落も観測され、為替や資源依存度の高い地域で波及が拡大している。こうした外的ショックを受け、各国は金融政策の見直し、予算の再配分、輸送・エネルギー備蓄の確認などで対応を強めている。
同時に中国とロシアの貿易拡大や中国の輸出回復、インドの高成長見通しなど成長面のポジティブな動きも継続する。だが、エネルギーと地政学の変動は金融市場のセンチメントを左右し、BRICS内の政策整合性と外部ショック耐性を試す局面が続いている。
ブラジル
ブラジルでは金融・企業側の負担調整と司法・社会政策の両面で変化が進んでいる。市場は2026年の政策金利見通しを引き上げ、1月の鉱工業売上高は前月比2.3%増となったものの2025年水準は下回った。ルラ大統領は脆弱者への強制性交を否認・軽視させないための法案に署名し、最高裁では公金横領疑惑で起訴されたPL議員の裁判が始まった。国際的な原油高と地政学的緊張を受けて同国でも影響が懸念されるが、国家石油庁はリオグランデ・ド・スル州のディーゼル備蓄は十分だと確認した。小売り大手パォン・ヂ・アスカールは45億レアルの債務再交渉で合意し、バンコ・ド・ブラジルは最大90%の割引を含む債務再編計画を発表した。
ロシア
ロシアでは軍事作戦と外為市場のボラティリティが目立っている。ロシア軍はウクライナ軍が使用するとされるエネルギー施設への大規模攻撃を報告し、FSB長官は対テロ体制が新たな脅威に対応していると述べた。プーチン大統領は1週間に2度目のイラン大統領との電話会談を行い、ロシア産原油への米国の制裁解除については詳細に踏み込まなかった。ICEの取引でブレントはほぼ7%下落し、対ドル為替はフォレックス市場で初めて80ルーブルを超えた。対中貿易は1~2月で約12%拡大し、経済の外部依存構造にも変化が生じている。
インド
インドでは成長見通しが堅調な一方で外的ショックが短期的な金融市場の乱れを招いている。EYは2026–27年のGDP成長率を6.8〜7.2%と見込む。連邦閣僚会議は国境を接する国からの投資に関する対外直接投資ルールを変更し、珠瓦ル空港への連絡路の改定費用を約363億ルピーに修正したほか、西ベンガル州とジャールカンド州の鉄道複線化に約447億ルピーを承認した。原油高を受けて株式市場は軟調に始まり、ナスダックに相当するNiftyは109ポイント安、Sensexは356ポイント安で寄り付いた。イスラエル・イランの緊張でデリー発テルアビブ便が折り返した事例もあり、年間の食料輸出は約5兆ルピーとほぼ到達するとピユシュ・ゴーヤル氏が述べた。
中国
中国では外需と通貨の安定、国内インフラ投資が足並みをそろえている。1~2月の対外貿易は前年同期比18.3%増と力強く、オンショアの人民元は約6.8982まで強含んだ。アジアインフラ投資銀行は30億元のパンダ債を発行し需要が記録的だった。新華社は技術革新と高付加価値製造を優先する5か年のロードマップを打ち出し、済南—ビンジョウ高速鉄道は全線の敷設作業に入った。中朝間は3月12日から往復の旅客列車が運行を始め、アラブ諸国から1万人超の自国民帰還も無事完了した。
南アフリカ
南アフリカでは選挙運営と国境管理、保健対策が同時に課題となっている。独立選挙委員会は地方選の投票用紙が過度に長くなる懸念を示し、特別有権者登録日を6月20日と21日に設定した。国境管理局は入国管理での腐敗対策キャンペーンを開始し、州財政ではハウテン州に2026/27年予算で30億ランドの増額があった。クワズールー・ナタール州では口蹄疫の一斉予防接種が始まり、政治タスクチーム解散に対してはセンツムレ氏が公に疑問を呈している。原油相場は一時約11%下落し、外部発言が国内市場に大きく影響した。
今回の動きは、エネルギー価格の急変動とBRICS各国の政策対応の不一致を露呈しており、世界的なインフレ率の再上昇と為替市場の激しい変動を招く直接的なリスクを示している。