原油価格が1バレル105ドル超に急騰、地政学的緊張がBRICSの金融と供給に波紋を広げる
直近の地域的敵対行為を背景にブレント原油が1バレル105ドルを超え、国際エネルギー機関が戦略備蓄放出を呼びかけたことで供給懸念が強まった。エネルギーショックはBRICS各国の市場と政策運営に直接影響を及ぼし、金融緩和を見込む国と為替・債券市場の動揺に直面する国との対応差が鮮明になっている。
地政学リスクとエネルギー価格の上昇は、成長見通しやインフラ投資、災害対応といった国内課題と同時並行でブロック内の政策優先順位を変化させており、域内外の資本フローと供給網に具体的な影響を及ぼしている。
ブラジル
ブラジルでは金融緩和期待と気候災害対応が同時に進む局面にある。市場は中央銀行が政策金利セリックを0.25ポイント引き下げると見込んでおり、同国のエネルギー市場ではブレントが105ドル超に達して供給逼迫の懸念が高まったため、国際エネルギー機関の備蓄放出要請が注目される。議会は直近、長らく遅延していたメルコスール—EU貿易協定の公布を見込むほか、連邦政府は豪雨被災地向けの緊急融資枠を設け、ブラジリアは短期の災害対応と長期の緩和・適応を組み合わせた新たな気候危機対策を打ち出した。
ロシア
ロシアでは軍事対立と市場変動が同時進行している。当局は直近1週間で約5,000台の無人機を撃墜したと発表し、クラスノダール地方では145機の撃墜と石油貯蔵所の火災が相次いだ。ウクライナ側の無人機攻撃はベルゴロド周辺で24時間に50機超に達し、ロシア軍はウクライナのエネルギー・輸送インフラを攻撃した。金融面ではロシア国債指数が昨年9月以来初めて120ポイントを上回り、一方で対ドル為替は81ルーブルを超え、1月以来の水準に達した。外相は戦略的安定の一環として不拡散体制(NPT)維持を重視すると述べている。
インド
インドでは成長見通しの上方修正と市場の短期的なセンチメント悪化が同居している。フィッチが成長率見通しを7.5%に引き上げる一方で、米国とイランを巡る緊張を受けてセンスックスとナイフティが約2%下落した。財務相ニルマラ・シタラマンは2025–26会計年度に約2.81兆ルピーの追加歳出を求め、商務相は年間食料輸出が約5兆ルピーに近づいていると述べた。首相はアッサムで高架港回廊の起工式を行い、約52.6億ルピー規模の水路事業を始動させたほか、ジャイワル国際空港への接続回廊の費用見積りを約363億ルピーに改定することが閣議で承認された。
中国
中国では景気回復の兆しと対外摩擦の警戒が並走している。工業生産は直近2か月で前年同期比6.3%増、固定資産投資は同1.8%増と生産・投資活動が持ち直しを示し、2月の外為市場は安定を保った。宇宙分野では快舟11号が8基の新衛星を打ち上げ、神舟21号の乗組員が2回目の船外活動を完遂した。国際的には米国との貿易・投資協力促進のための二国間ワーキングメカニズム構築が協議される一方、対米のセクション301調査を巡る批判も続いている。
南アフリカ
南アフリカでは成長再生のカギに鉄道と雇用問題が位置付けられている。シリル・ラマフォサ大統領は経済成長と雇用創出の主軸として鉄道インフラの展開を強調し、郵便公社の事業再建プロセスは長期化し清算リスクが排除されていない。ムプマランガ州はエスコム債務を抱える自治体支援の見直しを進め、鉱山労組は約2,400人の解雇圧力を前にサマンコールと交渉を続けた。国際司法裁判所を巡る手続きでは、南アフリカはイスラエル側の回答を受けて追加提出を判断する方針を示した。
エネルギー価格の急騰と地域紛争がBRICS内で金融政策の方向性を分断し、資源依存国と内需主導国の間で政策の齟齬が露呈している。これは世界的なインフレ圧力と資本移動の不安定化を通じて、短期的に供給網と市場ボラティリティを増幅する明確なリスクである。