ロシアのEU向けエネルギー市場からの撤退準備が表面化し、BRICS諸国の経済・地政学的リスクが同時に高まっている
BRICS全体では、各国が国内安定と戦略的利害を優先する動きが強まり、エネルギー供給や資本の流れに波風が立ち始めている。ロシアのエネルギー戦略の転換予告を軸に、ブラジルの公的資金注入と市場介入、中国の為替と外資誘致の動き、インドの大規模インフラ投資が絡み合い、短期的な市場変動と供給連鎖の混乱リスクが高まっている。
ブラジル
ブラジルでは公的機関と政府が景気支援と市場介入を同時に進める政策姿勢を鮮明にしている。国営開発銀行BNDESは2025年に約3,650億レアルを経済に注入し、約150億レアルの利益を計上したほか、国庫は10年以上ぶりに国債市場への大規模介入を実施した。社会保障系の給付であるボルサ・ファミリアの3月分支給が開始され、コポムはインフレリスクに対処するため会合を開いた。ペトロブラスはコロンビアで有望なガス井を発見し、カンポス盆地の2地域で生産権を回復した。ハッダド大臣は燃料価格抑制のため州向け提案を準備し、議会はメルコスール–EU協定を公布した。
ロシア
ロシアではエネルギー輸出戦略の抜本的見直しと経済指標の不安定化が同時に進んでいる。クレムリンは大統領の指示に基づくEU向けエネルギー市場からの撤退実行の具体化を検討しており、外交通としては対ウクライナ協議がジュネーブで行われる可能性を示しつつもそこを第一選択とはしていない。エネルギー分野では、エネルゴダルに電力を供給する高圧線がウクライナ側の攻撃で損傷したとされ、ラヴロフ外相はトルコ外相とイランやエネルギー案件を協議した。中央銀行はドルのレートを81.91ルーブルに設定し、経済省は年次インフレ率を5.84%と公表した一方で、インフレ期待は3月に13.4%へ上昇した。素材大手Rusalは2025年通期でIFRSベースの調整後損失を7億8,700万米ドル計上した。
インド
インドでは産業基盤と輸出振興に向けた大規模投資と制度整備が進行している。閣僚会議は100の工業団地整備に充てるBHAVYA計画に約3,366億ルピーを配分することを承認し、ウッタル・プラデーシュ州の幹線道路4車線化事業に約697億ルピーを承認した。通商相は食料品の年次輸出が約5兆ルピーに迫ると述べ、国土・ダム管理では国家ダム安全機関の事務所が開設され、デジタルとAIを活用したダム安全ツールが導入された。主要8業種は直近で2%の成長を示し、自由貿易協定が中小企業の国際サプライチェーン参入を促している。海軍総監は公式訪問で米国を訪れている。
中国
中国では外交的な抑制呼びかけと国内の投資誘致・為替動向が併存している。外務省は「強権政治に未来はない」と表明し、中東での被害拡大回避を求めた。副首相はUAE大統領特使と会談し、国営通信は第15次五カ年計画下で外資がハイテク分野へ流入する新たな案件を報じた。農村では耕地契約延長の試行指針が出され、直近ではオンショアの人民元が1ドル=6.8909元まで強含んだ。中国株は直近の取引で上昇して引け、沿岸警備隊は尖閣周辺での哨戒を実施した。
南アフリカ
南アフリカでは司法・政治の手続きと労働問題が国内情勢の重しとなっている。シリル・ラマポーザ大統領は特別委員会の質疑に応じ、マドランガ委員会の公聴会は2026年3月18日に再開した。プレトリア高等裁判所は検察総監(NDPP)任命に対する異議申し立てを審理することに同意し、マンデラ・マセモラは大統領とPKTTの段階的解体で合意したと述べた。消費者物価上昇率は3%に鈍化しつつ、運輸現場ではSATAWUが復活するかもしれないストで復活祭期間中の旅客に混乱が出ると警告し、デジタル化事業の労働者は内務省に恒久雇用を求めている。
ロシアのEU向けエネルギー市場撤退準備とブラジルの大規模な市場介入、人民元の上昇と中国の外資誘致が同時並行で進むことで、エネルギー供給網と国際的な資本フローの交錯が世界市場に直接的な混乱をもたらす危険性が高まっている。BRICS諸国は協調を掲げながらも、供給確保と国内安定を最優先するという根本的な矛盾を露呈している。