BRICS圏でエネルギー供給の混乱が再燃、欧州ガス高騰とホルムズ海峡のLNG船団停滞が国際市場を直撃
欧州の天然ガス価格が1,000立方メートル当たり850ドルを超え、ガスの季節的備蓄への注入が現行価格では商業的に割に合わないとの判断が出たことで、BRICS内外でエネルギー供給と価格の不安が一段と高まっている。加えてホルムズ海峡で約30万トンのLNGを積んだとされるインド船団が停滞しているとの報告が、海上物流のボトルネックを浮き彫りにした。
こうしたエネルギー市況の混乱は、BRICS各国の政策対応と国内課題を際立たせている。ロシアはパイプラインへの攻撃を受け止めつつガス供給の採算性が崩れ、ブラジルでは国営石油や電力政策が国内供給の調整に動いた。インドは株式市場が急落する一方で農村やインフラ向け支出を前倒しし、南アフリカは雇用と公共サービスの危機対応を優先させる状況が続く。
ブラジル
ブラジルでは金融政策とエネルギー供給調整が並行して進む。中央銀行は政策金利を年率14.75%に引き下げ、社会支援の一環として3月のボルサ・ファミーリャ給付が予定どおり開始したほか、歴史的な予備力を伴うエネルギーの入札で約1万9,000メガワットの能力を契約した。連邦政府はディーゼル輸入に対して州がICMS税率をゼロにすることを提案し、運送料が公定運賃表を下回る企業には制裁を科す方針を示した。石油大手ペトロブラスはコロンビアでのガス油田の発見を公表しつつ、在庫見直しのために予定していた燃料オークションを一時停止した。
ロシア
ロシアでは物価動向とエネルギー採算性の乖離が際立つ。直近週の年率インフレは5.79%に鈍化し、T d Technologiesの第4四半期営業純利益は41%増で6.5億ドル超に拡大した一方、欧州の高騰したガス価格を受けてガスプロムは地下ガス貯蔵への注入が商業的に不利と判断した。パイプラインに対する新たな攻撃を退けたとしつつ、為替では中央銀行が公式ドルレートを83.13ルーブルとした日にインターバンク市場でドルが87ルーブル超で取引されるなど市場のひずみも目立つ。軍事分野ではVorobey 15爆撃ドローンの量産が始まった。
インド
インドでは市場ショックと並行した財政・社会施策が目を引く。株式市場は深押しし、センセックスは1,800超の下落を記録したが、政府は首都圏で約3,350億ルピー相当の開発プロジェクトを開始し、15州向けの災害対策に約100億ルピーを拠出した。農家向けのPM KISAN第22回分として約1,864億ルピーを支給する見込みで、情報セキュリティ投資は2026年に約34億ドルに達すると見込まれている。FSSAIは食品事業者の許認可の恒久化など大規模な食の安全改革を承認し、AIを活用した高速道路管理の全国展開を2026年末までに予定している。
中国
中国では成長支援のための資本市場活用と規制強化が同時に進む。中央財政収入は12月期で0.7%増加し、当局は技術戦略企業向けの資金調達拡大のため資本市場を活用する方針を示した。新エネルギー車セクターの競争規則をさらに強化するほか、小水力のグリーン転換促進や輸入食品の安全監督港湾執行の強化、農地賃借契約延長の試行指針も公表された。人民元は1ドル約6.8975元に弱含み、株式相場は直近で下落している。
南アフリカ
南アフリカでは雇用と公共管理の課題が深刻度を増す。建築計画の承認数と竣工はともに約6%減少し、首都圏の水供給を巡る汚職疑惑でトシュウェンの副市長が捜査対象となっている。副大統領はいわゆる「水タンク運び屋」の排除を進める計画を示し、内政面ではイングォニャマ信託評議会を管理者に置き換えると閣僚が発表した。選挙ではIFPがクワズールー・ナタールの3補欠選挙で勝利を主張し、マティベリ社の銃器供給がインアンダ地区の不安定化に結びつく調査結果も出た。ラマポーザ大統領は失業問題を最優先課題として位置づけている。
今回の事象からは、エネルギー供給の物理的制約と価格変動がBRICS各国のマクロ運営と安全保障に同時に打撃を与えうることが明確になった。特にガス価格の高騰と海上輸送の停滞はインフレ加速と供給網逼迫を同時に招き、資源依存度の高い国々で財政と通貨政策の矛盾を一層際立たせる点が最大のリスクである。