欧州地下ガス貯蔵、6年ぶりの低水準で冬季備蓄に懸念
GIE(Gas Infrastructure Europe)のデータを基にした集計で、2026年8月のEU域内地下ガス貯蔵への正味注入量が過去6年で最低水準に落ち込み、来る暖房シーズンの備蓄不足への懸念が強まっています。
4月初め以降、欧州は今冬に必要とされる量のわずか56%、正味で約38bcmしか注入できておらず、現時点の貯蔵率は62.99%で過去5年同日の平均を17.27ポイント下回っているとのことです。これは2011年の記録開始以来同日の最低水準に当たり、EU域内の貯蔵施設に保管されているガスは約68.9bcmと、1年前に比べ約14.3bcm少ないという状況です。
欧州委員会の規定では加盟国は毎年10月1日から12月1日の間に貯蔵を90%まで確保する義務があり、10%の柔軟性マージンが認められるものの、今季の目標を満たすためには正味注入量が少なくとも68bcm必要だと試算されています。現状の注入ペースが続けば、伝統的な秋冬シーズン開始時点で貯蔵は70〜75%程度にとどまり、過去最も低い水準で暖房シーズンを迎える可能性が指摘されています。
こうした補充の停滞は、中東紛争を契機に液化天然ガス(LNG)を巡るアジア市場との供給競争に欧州が押され、調達に苦慮したことや燃料価格の上昇が大きな要因とされています。加えて、6月と7月の異常高温で冷房用電力需要が急増したことがガス消費を押し上げ、原子力や風力・太陽光と並ぶ主要な発電燃料であるガスの備蓄回復を難しくしました。
実際、7月の平均貯蔵補充率は2011年以降で最も低い水準の一つにとどまり、8月のわずかな加速も限定的だったため、回復にはさらなる供給増加が不可欠です。ロシアのガス大手ガスプロムは次の暖房シーズンに向けた在庫が75%に達しない可能性を示しており、欧州側には調達戦略の見直しや代替エネルギー・節電策の検討が迫られています。
TASSの分析は、10月の規定期日までに必要量を確保するためには向こう数週間の追加的なLNG受け入れや輸入価格の抑制といった具体的な対策が不可欠であることを改めて示しており、今後の交渉と需給動向が冬季のエネルギー安定に直結する見通しです。